3人組ロックバンド「ピストルジャズ」
「室戸の海賊」大暴れ


丸刈りの少年たちは、テレビから流れる外国の音楽に打ちのめされた。
ジミ・ヘンドリックス。プリンス。とにかく、かっこよかった。あれから25年。室戸市佐喜浜町で育った彼らは「室戸の海賊」と呼ばれ、インターネットを通じ音楽で世界を席巻している。
3人組のロックバンド「PISTOL JAZZ(ピストルジャズ)」。泥くさく、かたくなに、理想の音を追い続けている。



9月末、徳島市の繁華街にあるライブハウス。上半身裸でステージに飛び出したタカオちゃん(40)=瀬戸崇生さん=が、マイクに向かって叫ぶ。「ウィアー、ピストルジャズ!」。五臓六腑を打ち抜くような、迫力のライブが幕を開けた。



タカオちゃんがギターに目覚めたのは、佐喜浜中学校2年のころ。日本のヘビメタに憧れ、筆箱をギター代わりに、教室で指をぴこぴこ。「ギターがうまい子」と有名になった。

ドラムのあつむー(41)=東野敦夫さん=は同級生。父親のオーディオルームを占拠し、タカオちゃんらとプロモーションビデオを撮ったりもした。

ベースの森本君(41)=森本正文さん=は1学年上。バイクが好きで、高校時代はタカオちゃんと「朝から朝まで」やんちゃして過ごした。



2008年の正月。前年に急死した同級生のことを思い、べろべろに酔ったタカオちゃんが、あつむーに電話をかけた。
「このまま死んでも何にも残らん。俺らにできるのは音楽だけ。真面目にバンドをやろう!」。森本君も誘った。それまでの3人は、年に1度、地元のイベントでだけ演奏していた。
「室戸の海賊」が走り始めた。
自主制作のCDが評判を呼び、09年、高知市のライブハウスに進出。インターネット上で音源を公開し、希望者にステッカーとCDをどんどん送った。
送り先は国内にとどまらず、世界20カ国以上。タカオちゃんのパソコンには、海外から喜びの声が続々寄せられる。「CD届いたぜ!ビューティフル」(オランダの男性)、「すげえ気に入った。マジ独創的でイカしてる」(英国の男性)、「アリガト。愛してるぞ」(ベラルーシの男性)。イタリアの女性ファンは、ピストルジャズのロゴ入りTシャツを着て満面の笑み。
月内にはポルトガルのレコード会社から2枚目のアルバムがリリースされる予定だ。




ライブはMCもない直球勝負。「トイレに行く隙を与えん」「ステージ上は戦場」。中学、高校と相撲で鍛えたあつむーが四股を踏むようにバスドラムを鳴らす。タカオちゃんのギターが火を噴く。森本君はじっと目を閉じ、気持ちよさげにベースを奏でる。「客が何人居ても一緒。自分らの演奏ができれば、それでいい」とタカオちゃん。森本君も「俺らの持ち味は、汗や鼻水を垂らして一生懸命にやるところ。絶対に伝わる」。


彼らの曲に歌詞はない。日本の片田舎で生まれた音楽が、情報通信の波に乗り、世代や国境、言葉の壁をひょいっと越えて鳴り響く。日本のレコード会社からもオファーがあるというが、楽曲の無料公開を続ける。
「別に有名になろうという欲はない。営利が目的ではなく、自分たちの音楽を聴いてほしいだけ。いつの時代に聴いても「かっこいい」と思われる、生きた証を残したい。俺ら、おじいちゃんになっても、このバンド続けるき」今も丸刈りのタカオちゃんが、ビール片手に、にっと笑った。





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